「Because it’s there.」
何故エベレストに登ろうと思ったのですか? と問われた登山家ジョージ・マロリーは答えました。 それがそこにあるからだと。
のちに「そこに山があるから」と和訳されたジョージ・マロリーの言葉はあまりにも有名ですが だいたいの場合、登山や冒険をするのに大層な理由は必要ないものです。
思いつきや、突発的な衝動が人を冒険へと突き動かします。
自分の場合、冒険には自転車が付属します。 と言っても自転車がメインではなく、あくまで冒険の中に自転車に乗るシチュエーションがあるという感じ。 自転車だと車では行けない所や行きづらい所に、歩きより早くアクセスできるメリットがありますし、 独力で目的地まで進む過程では自身の内面にフォーカスすることにもなります。
今回行ってきたのは「川上牧丘林道」 長野県川上村から山梨市牧丘町までを結ぶ峠道で頂点は「大弛峠」というヒルクライム好きなローディーなら聞き覚えのある有名峠道。 大弛峠というと山梨県の塩山市方面からアプローチするのが一般的で、自分も何回かロードバイクで登ったことはあるのですが、今回は長野県の川上村から登ってみようと思いました。
未だ行ったことのない未開のルートへの冒険欲と、コアな人たちの間で「ストロングスタイル グラベルロード」と呼ばれる関東で指折りの未舗装路への興味が衝動を後押ししたのです。
川上村から大弛峠へ至る道のりは2/3が舗装路、1/3が未舗装路という内容ですが、未舗装路区間は約9kmと長く、 場所によっては数十cmの石や岩がゴロゴロ転がっており、もちろんロードバイクでは走るのが困難な道。
また今回の冒険では大弛峠上でのテント泊を決めていたので、バイクパッキングができ、アドベンチャー・グラベルバイクを所有している頼れる仲間2人と一緒に走りました。
旅は道連れ、と言いますが信頼できる仲間と一緒であれば旅の愉しみは何倍にもなります。
冗談を言い合ったり、わざと飛ばしたり、止まって写真を撮ったり、 十数kmのキツいグラベルロードも仲間と走ればあっという間に走りきれてしまいます。
それでも終盤のスイッチバックでは「ゴールはまだかな」と何度も考えてしまうほどのストロンググラベルロードでした。
そして皆無事に大弛峠に到着。 ここで安堵感からか疲労がピークに達し写真を撮る余裕もなく、各々テントを設営して休息。
少し休んで元気が戻ったところで、大弛峠近くにある「夢の庭園」に徒歩で向かいました。
「夢の庭園」は南・北アルプスや八ヶ岳、富士山など長野県と山梨県の山々が一望できる絶景スポットなのですが、 夜は天体観測スポットとしても有名なようです。
暮れていく夕日と次第に数を増していく星々を無心で眺めていると、日中のライドの疲れが洗い流されるようでした。 10℃ほどの気温の中で風邪をひきそうになるまで星空を堪能した後は、テントへ戻り吸い込まれるように眠りに落ちたのでした。
翌日は早朝から大弛峠から4kmほど離れたところにある「金峰山」を目指して登山。
2500mの高さから見る山々はただただ壮大で、自分がちっぽけな存在だと思い知らされます。 普段の人や物に囲まれた生活とはかけ離れた自然が其処にありました。
自転車でのグラベルライドも早朝の登山も疲れることもありますが、それを越える圧倒的な「充足感」が冒険にはあり、それは他では得難いものだと思います。
冒険は現実から離れるほど色濃く記憶に残り、そしてまた次の冒険へと駆り立てていくのです。 さて次は何処へ行こうか?
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